イギリスのごはんはおいしくない、とよく言われます。確かに、11泊のロンドン滞在中、びっくりするほど不味い食べ物にも出会いました。どうやら、外食産業だからこそ、おいしいものを出さねば、もしくは食べなければ、という意識が薄い様子。家庭でつくって食べているご飯はそんなにひどくないという話もあります。それでも、せっかくなら日本にはないおいしいものを食べてみたいと、同じ宿にやってきた、在英約2年の日本人に、おすすめの食べ物はありますかと聞いてみました。何かひとつくらいオススメされるかと期待したのですが、
「ロンドンで、ですかぁ。フィッシュアンドチップスも、港町ならおいしいんですが。地方なら、イギリスもおいしいものはたくさんあるのですが……インド料理か、中華料理を食べに行ってください!」
と力強く宣言されてしまいました。
そんななか、わりと及第点と言えるイギリス料理は、Pie and Mashでしょうか。
19世紀に庶民の料理として定着したというこの料理は、なんでもパイにくるんで焼いて、マッシュポテトや豆類を添え、ソースをかけて食べます。一度、試合会場で食事をご一緒したアメリカ人の女性が「この国のtypical foodよ」と教えてくれました。レスリングの試合会場があったExcel ArenaにもPie and Mashの売店がありました。きちんとしたお店では一度も食べなかったので、お皿に出されるときはどんな料理になっているのか、残念ながら確認できていません。
写真のPie and Mashは中身が鶏肉のクリーム煮。試合会場で食べたなかでは、ちゃんと食べものでした。
ポテトを添えたりソースをかけなくても、何でもパイに包んで焼くのがロンドンの皆さんは好きなようで、宿の近くにあったBorough Marketにも、パイ包み焼を売るお店がいくつもありました。
イギリス料理に関する私の乏しい記憶によれば、キドニーパイという名物があって、そのパイには牛肉とエールで煮込んだ臓物が入っていると聞いていました。そのため、ロンドンでパイ包みと言えば、牛肉を中心としたラインナップになるとばかり思い込んでいました。
イギリス料理に関する私の乏しい記憶によれば、キドニーパイという名物があって、そのパイには牛肉とエールで煮込んだ臓物が入っていると聞いていました。そのため、ロンドンでパイ包みと言えば、牛肉を中心としたラインナップになるとばかり思い込んでいました。
ところが、実際に売られていたのは鶏肉だったり野菜だったり、チーズだったりと多種多様。Borough Marketでパイ売り屋台のにーちゃんに、一番人気はどれかと尋ねると、チキンだと即答されました。ベジタリアン向けと銘打ったものもあります。
牛肉じゃないのかとびっくりしましたが、狂牛病騒ぎだったり、先進国での健康ブームを考えると、一番人気に「伝統食」が占めるのは難しいかもしれません。
肉類の扱いが、さすがに上手だなあと思わされたのは、ポークパイを食べたときでした。冷たいまま切って食べると、肉とパイ生地の間にとろりとおさまったゼリー状になった油脂が見えます。この油が、肉のおいしさを際立たせていました。そして、胸焼けするような嫌な油分ではなく、食べた後味もサッパリとしていました。ひとりでまるごと、一度に食べるのはさすがに無理でしたが、このポークパイのことを思い出すと、あの豚肉のおいしさが今でも舌の上によみがえります。
Pie and Mashの欠点は、全体的に茶色っぽいので彩りが食欲を誘わないことと、気づけば炭水化物を大量に食べてしまうところです。フィッシュアンドチップスもそうですが、何かというとジャガイモをたくさん食べてしまう料理ばかりです。欧州へジャガイモが渡ってきたのは、コロンブスがアメリカ大陸を発見して以降のはずなので、早くても15世紀末から16世紀。それまで、この人たちは大きな体を支えるために、ジャガイモの代わりに何を食べていたんだろうと謎が深まるのでした。
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